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    朗読教室 受講生による第七回朗読会

【butterflies】 鼓動の高まり。
ドキドキするような、不安になるような、そんな作品がテーマ。少し怖くて、不思議で、奇妙な朗読作品を真夏の夕暮れに。

出演者(50音順)
垣内浩子/金木美穂/カンナ/北山阿梨/清野健太郎
たなかかず/中條裕美/辻あきこ/出島ひろ子/中道虎之介


日時:2010年8月8日(日)17:00スタート
入場料:無料
会 場:
NIJO poco a poco HALL(ぽこあぽこホール)
     tel 075-231-2993
     京都市中京区西ノ京職司町8-2
     (JR.地下鉄「二条駅」徒歩4分)
 

写真:福迫章子
 


(講師 佐野真希子より)

今回の会場「NIJO poco a poco HALL」。「二条 ぽこあぽこ ホール」ってことで、グラス・マーケッツの事務所がある二条です!徒歩5分です!

こじんまりしたホールで、雰囲気もなかなか良いんです!!気に入って、早速次回発表会もこの会場に決定です。

さて、今回の朗読会、みなさんの上達はもちろんですが、それぞれの個性がはっきりとして、聴く人が楽しめる朗読会だったのでは、と思っています。

一言で「朗読」と言っても、本当に色々。全員、本を持って朗読をしていますが、表情、視線の動きを使って表現する方もいらっしゃいます。

作品中のいわゆる「」(カギカッコ)のセリフをどれくらい演じるかは読み手の好みで随分変わってきます。こういったことも個性の一つとして現われてきます。

そして、間の取り方や抑揚など、まだまだやりたいように出来ない、と生徒さんはおっしゃいます。それでも、私は聴いていて「どのようにしたいか」が見えてきて、それがみなさんそれぞれ違うのです。

私もすっかり朗読会を楽しみました(笑)




   

朗読:垣内 浩子(かきうち ひろこ)
作品:十三年
著者:山川 方夫(やまかわ まさお、1930年2月25日 〜1965年2月20日)
 
朗読:金木 美穂(かねき みほ)
作品:正直者―鬼僕の事
著者:京極 夏彦(きょうごく なつひこ、1963年3月26日- )
     

朗読:カンナ
作品:書斎奇譚
著者:村上 春樹(むらかみ はるき、1949年1月12日 〜)
 
朗読:北山 阿梨(きたやま あり)
作品:富士子 島の怪談
著者:谷 一生 (たに かずお、1956年 〜 )
     

朗読:清野 健太郎(せいの けんたろう)
作品:幽霊滝の伝説
著者:小泉 八雲(こいずみ やくも、1850年6月27日 〜1904年9月26日)
 
朗読:たなか かず
作品:地下のマドンナ
著者:朝松 健 (あさまつ けん、1956年4月10日 〜)
     

朗読:中條 裕美(ちゅうじょう ひろみ)
作品:美しき黒髪に種を
著者:森 博嗣 (もり ひろし、1957年12月7日 〜)
 
朗読:辻 あきこ(つじ あきこ)
作品:木の実を待ちながら
著者:阿刀田 高(あとうだ たかし、1935年1月13日 〜)
     

朗読:出島 ひろ子(でじま ひろこ)
作品:おかめのはなし
著者:小泉 八雲(こいずみ やくも、1850年6月27日 〜 1904年9月26日)
 
朗読:中道 虎之介(なかみち とらのすけ)
作品:奇数
著者:斎藤 肇(さいとう はじめ、1960年 〜)
   
(写真:元木りさ)
 
   
【作品紹介その1】佐野真希子より (10.8.4)

さてさて、発表会本番まで少しずつですが、朗読する作品や作家さんについて内容はバレないようにちょっとお話しようと思います。

『十三年』は山川方夫さんの「夏の葬列」という本の中におさめられています。
すべて短編で本のタイトルにもなっている『夏の葬列』も今回朗読する垣内さんのお気に入りです。
しかし、朗読すると15分近くになってしまうので、今回は断念。レッスンでは両方の作品をやっているのですが、同じ作家さんの作品なので、文体や言葉のリズムがどちらかを練習してもどちらにも活かせるので、ここ一か月の垣内さんとのレッスンは山川方夫ワールドです!

作家の山川方夫さんについて。
お父さんは日本画家で、幼稚舎から大学院まで慶応と裕福な家庭なんですが、14歳の時、お父さんが亡くなっています。
ちょっと検索してて、そんな解釈もあるのがと思ったのが、「(中略)父の突然の死によって「原罪」を背負ったと考えた山川方夫は、小説家になろうと決意する。解説の山崎行太郎氏によると、父があまりに早く死んだ場合、少年は父の死に対して罪悪感を持つとフロイトがいっているとある。それはライバルである父を殺したいという無意識の願望が少年の心にあり、そんな時に父が死ぬと、あたかも自分が殺してしまったような錯覚にとらわれ、深い罪悪感を持つのだと説明し、山川の文学は「罪悪感」の文学だと山崎氏は断定する」だそうです。彼は結婚して翌年、35歳のとき交通事故で亡くなりました。ちなみに『夏の葬列』は中学生の教科書の題材にも使用されているんですね。


『正直者―鬼僕の事』は京極夏彦さんの「旧(ふるい)怪談―耳袋より」におさめられています。
この本は江戸の奇談随筆『耳袋』(原文も収録)を現代怪談に仕立ててあるそうで、なんと!?「京極夏彦、初の児童書!」なんですって。京極夏彦さんの児童書、か、、、(笑)でもこの作品は、怖いお話が好きな人が読む「新耳袋」(←私が読んでないので超勝手なイメージだけ)みたいに怖くはないです。児童書だからですかね?少しユーモアさえも感じるお話です。


村上春樹さんの『書斎奇譚』は1982年にBRUTUSに掲載した短編です。
今回初めて読んだのですが、長さもちょうどよくて、カンナさん、いつか自分の朗読ネタにさせていただいてよいですか?(笑) 私はハルキストではありませんが、結構好きで読みます。といっても『1Q84』はようやく最近3巻まで一気読みしました(笑) 
そんなわけで、つい自分が熱くなってあれやこれやと言いすぎているような気もしますが!?カンナさんは自分なりの解釈を更に加え、仕上げにかかっております!

本番まで後4日!!


【作品紹介その2】佐野真希子より (10.8.5)

前回に引き続き作品について。

『富士子』は『富士子 島の怪談』に収録されています。 「本邦唯一の怪談専門誌」である『幽』の2009年「第4回『幽』怪談文学賞」の受賞作品です。
『幽』という雑誌もちょっと知らなかったのですが、検索してみるとWEBでも読者投稿怪談などもやってますね。怖いのが好きな方は一度チェックしてみても。

『幽』サイト→http://www.mf-vinci.com/yoo/index.php 綾辻行人さん、京極夏彦さん、小野不由美さん、謎の覆面作家の山白朝子さん、有栖川有栖さん、福澤徹三さん、平山夢明さん、小池壮彦さん、安曇潤平さん、工藤美代子さん、加門七海さんなどが怪談作品を連載。そしてこの怪談文学賞審査員は、小説家の京極夏彦さん、岩井志麻子さん、南條竹則さん、漫画家の高橋葉介さん、そして編集長の東雅夫さん。

『富士子 島の怪談』に登場する富士子さんは審査員でもある岩井志麻子さんがモデルなんですって。いや、本作家の谷一生さんは岩井に会ったことがないそうで、「岩井さんの作品世界から受ける印象が」モデルとおっしゃってます。『富士子 島の怪談』は短編といっても10分では読める長さではないので、今回は抜粋です。是非実際に読んでみたいと思っていただける朗読になったらと思います! あ、朗読の北山さんに頑張ってもらいます!!(笑)


『幽霊滝の伝説』『おかめのはなし』はすでに怪談の古典とも言えます小泉八雲、ラフカディオ・ハーンの作品です。
一般的に知られているラフカディオは彼のミドルネームで、本当はパトリック・ラフカディオ・ハーン。
怪談の王道となる作品を清野さん、出島さんがそれぞれの持ち味で朗読されます。清野さんは先日「講談風など、どうでしょう?」とレッスンでは色々なアプローチをしているわけですが、本番はどんな感じになるのか楽しみですね!


『地下のマドンナ』は1998年に出版された『異形コレクション 1 ラヴ・フリーク』におさめられています。
以前、私もこの中に入っている皆川博子さんの作品を朗読したことがあります。このシリーズ、1が「ラブ・フリーク」で2が「侵略!」3が「変身」などテーマに沿った恐ろしい感じの作品が入ってます。

さて、作家の朝松 健さんについて、私は知識がないものですから、とりあえずウィキペディア検索(笑) 簡単に引用をさせていただきます。「怪奇小説の翻訳出版に従事しながら、西洋魔術関係の記事・著作を多数発表。西洋魔術についての知識を日本に体系的に紹介したのは彼をもって嚆矢とする。」とのこと。

熱狂的ファンの人がたくさんいらっしゃるんだろうな、と。私が普段、あまり読まない系統の本ですが、なんだか長編を読んでみたくなりました。そして、へえ〜!、と個人的に思ったことが。 「最近の小説やゲームで頻出する魔術関係の単語(例えば召喚魔術の「召喚」など)は彼が原典から邦訳・造語したものである。」 この作品は患者、看護師、医者の3人が順に語っていくのですが、朗読するたなかさんは、こんなキャラにしようか、あんなキャラにしようかと仕上がりが楽しみな演技です!

本番まで後3日!!


【作品紹介その3】佐野真希子より (10.8.6)

『美しき黒髪に種を』は2004年に「小説現代」に書かれ、2006年出版の短編小説「レタス・フライ」におさめられています。
ホント私の個人的な感想ですが、最初、朗読の中條さんがこの作品を持ってきたときに、私は「ん? 森博嗣って短編書いてるの!?」と思い、昔読んだ彼の代表作を思い出し、失礼ながら「ああ、理系の雰囲気のあんな感じか!?」と。

すると私の予想を裏切っての(森博嗣ファンには怒られますが)とても読みやすい素敵な作品。随分前に、うちのリーダ(←森博嗣的理系表記)池田に薦められた1冊か2冊読んだきりなので、また今読んだらどんなかな、と思いました。機会があれば読んでみようと。


『木の実を待ちながら』
は「最期のメッセージ」というショートショート集におさめられています。

阿刀田 高さんは私たち朗読するものにとって、本当にありがたいネタの宝庫です!とりあえず、テーマが決まったら阿刀田 高さんの本を開いてみる人も結構いらっしゃるのでは。「星新一ショートショートコンテスト」の審査員を星新一さんの死後、引き継がれたそうです。でも阿刀田さんももう75歳!?
さて、今回の作品はずっと一人語りの形で物語が進んでいきます。辻さんの語りをお楽しみください!


『奇数』は先ほども少し話題にしました1983年の星新一ショートショートコンテストの入選作。
ということはこの時、これを書いた斎藤 肇はまだ完全なプロ作家という感じではないですね。その後、1988年、『思い通りにエンドマーク』で、講談社ノベルスから「新本格ミステリ」の作家として長編デビューしました。
さて、この『奇数』という作品、後に「世にも奇妙な物語」にて柳葉敏郎主演で映像化されてたんですね。柳葉敏郎とは違った(!?)中道虎之介くんの朗読をお楽しみください!!

本番まで後2日!!